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「オトコの料理」と加工食品2

 都市研コラム「『オトコの料理』と加工食品」では、「男性の料理に関する意識と行動調査」(首都圏在住20~60代男性に対するWEB調査、n=1500、2010年)の中から、男性が料理をする際に市販のカレールウやパスタソースなどが使われている様子を紹介しました。
 今回はさらに詳しく、男性がよく作っているメニューごとに、市販の加工調味料の使われ方をみていきます。メニューは「男性の料理に関する意識と行動調査」で「得意料理」として上位にあげられたもの(※)のうち、市販の加工調味料が広く販売されているもの5種類です。
1位:カレー 2位:炒め物 3位:パスタ 4位:チャーハン 5位:煮物・肉じゃが 6位:焼肉・ステーキ 7位:揚げ物 8位:和風麺類 9位:魚料理 10位:ハンバーグ 11位:シチュー 12位:味噌汁


調査におけるメニュー名と市販加工調味料の定義
  • カレーライス:とろみのある汁をご飯にかける料理。ドライカレー・スープカレーなどや、インド・タイなどの外国風のカレーは含まない。「市販の加工調味料」は市販のカレーの素(固形ルウ・ペースト等)を指す。
  • 中華風炒め物料理:中華料理から発生した炒め物料理全般。具体的にはチンジャオロース・マーボ風炒め物・ホイコーローなどの料理。「市販の加工調味料」は市販の合わせ調味料(レトルト等)を指す。
  • 中華風以外の炒め物料理:上記以外の炒め物料理全般。「市販の加工調味料」は市販の合わせ調味料(レトルト等)を指す。
  • シチュー:汁にとろみのあるもの。具体的には、ホワイトシチュー・ブラウンシチュー等。ポトフ等は含まない。「市販の加工調味料」は市販のシチューの素(固形ルー・顆粒等)を指す。
  • パスタ料理:パスタ料理のうち、スパゲティなどの麺(めん)類。「市販の加工調味料」は市販のパスタソースを指す。

図1 あなたの作り方に最も近いもの/市販の加工調味料を使って作る割合


 図1は「あなたの作り方に最も近いもの」として、「市販の加工調味料を使って作る」を選んだ人の割合です。カレーライスでは95%が市販のカレーの素を使っており、シチューでも市販の素を使う人が90%となっています。一方、中華風炒め物とパスタ料理では、レトルトの合わせ調味料や既製パスタソースなどを使う人は7割以下、中華風以外の炒め物では4割以下となっています。
 カレーライスとシチューで使用割合が高いのは、これらのメニューを一から手作りするには材料や調味料を何種類も揃えなければならず、料理の手間や時間もかかるためだと考えられます。炒め物やパスタ料理は、カレーライスやシチューに比べると、自宅にある材料や調味料を組み合わせ、手軽に作ることも可能であるため、市販の加工調味料を使わない割合が多くなっているものと考えられます。
 女性を対象とした別の調査からの自由意見では、「自分で小麦粉を炒めて作ったこともあったが、手間や時間を考えると、簡単に作れる市販のルウが便利」「市販のルウなら間違いが無いし、早くできる」「市販のルウを使わないで作るとなると、材料も調理法もかなり工夫しないと満足がいくものにならない」というような声があがりました。また、カレーについては、「せっかく揃えたいろいろなスパイスが使い切れずに賞味期限切れ」といった声もありました。こうした声は、男性が料理をする際にもあてはまるのではないでしょうか。


 また、市販のカレーの素は使って当たり前のものとして浸透しているだけでなく、オリジナルな工夫を加える際のベースとなっていることも分かりました。

図2 市販の加工調味料を使って作る時の工夫(複数回答)


 市販の加工調味料を使って料理するときに、どのような工夫をしているかを聞いた結果が図2です。市販の加工調味料を使った上に「調味料をプラス」している人が、どのメニューでも3~4割いることが分かります。一方で、「隠し味をプラス」する人、市販の加工調味料を「2種類以上混ぜる」人をみると、カレーライスが他のメニューに比べて多くなっています。
 また、自由回答でその他の工夫の内容を聞いたところ、カレーライスでは他のメニューよりも多数の回答がありました。内容も、下ごしらえの工夫(肉をワインに漬けてから焼く等)、風味に個性を出す工夫(だし汁を入れる・果物を入れる等)など、他のメニューではみられないものを中心に、多岐にわたっています。
 市販の加工調味料は、万人受けする完成された味です。そこに工夫を加えて味に個性を出す楽しみは、どのメニューにも共通しています。その中でカレーライスで特に工夫が多くなっているのは、市販のカレーの素の特性によるものではないでしょうか。市販のカレーの素は他の加工調味料に比べて、何かを加えても味がぶれにくく、失敗料理になりにくいもの。そのため、作る人も自由に、様々な工夫を凝らすことができているのかもしれません。


 家庭の食卓だけでなく、子どもの給食やサラリーマンのランチ、病院や老人福祉施設でも人気のカレー。東日本大震災の被災地では、大鍋のカレーが、被災された方々や救助・復旧にあたった方々をしばしば支えたと聞きます。カレーのそんなオールマイティさに思いを馳せながら、週末には好みのルウを買ってきて、オリジナルのカレーライスを作ってみてはいかがでしょうか。

西形 涼子

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