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家庭用ゲームのターゲットニーズ

4月に入り2012年度の家庭用ゲーム市場実績が発表されました。
あちこちで見かける携帯電話やスマートフォンで遊ぶソーシャルゲームに押され、ここ5年間は減少傾向にあった家庭用ゲームソフトですが、ほぼ前年並みの実績となり底打ち感も出ているようです。


少し前になりますが、年初のSNSやネット掲示板で話題になったテーマがあります。
最近のスーパーマリオブラザーズでは「おてほんプレイ」というものがあり、一通り攻略方法を自動で見せてくれた後に、「このコースをクリアしたことにしてつぎに進みますか?」とメッセージがでるようです。


実際にはこの機能、2009年末に発売したWii向けのゲームから加えられたようですが、今はプレイしていない往年のユーザーを刺激したのか、はたまた「クリアしたことにして」という言い回しが引っかかったのか、ネット上では、いわゆる「まとめサイト」が多く作られお正月の話題づくりに一役買っていました。
発売元のWEBサイトによれば、初心者にもエンディングを見ることができるといったコンセプトなのですが、ゲームに対してやり遂げた達成感を求めるユーザーからは反発を受けたようです。


都市生活研究所が行った中学生以下の子を持つ親を対象とした調査では、子どもが一日にゲームをする時間の最頻値は「30分~1時間未満」でした。
それ以下の時間を含めると、子どもがゲームをすると答えた回答者の7割近くが一日1時間未満となっています。(図1)


子どもがゲームをする時間


このような状況を見ると、何度も何度もやり込んで経験を積み、クリアしたときの達成感を味わうといったゲームスタイルは難しいのかもしれません。
特に、空いた時間に遊ぶことのできる携帯ゲーム機やソーシャルゲームに比べて、テレビにつなげて遊ぶ固定型のゲーム機では一層厳しそうです。


さらに、時間的な制約だけでなくユーザーのゲームに対する指向も変化してきているのではないでしょうか。


ゲーム自体を攻略する楽しみから、コミュニケーションツールとしての楽しみ方へとユーザーニーズが移行してきていることも考えられます。
リビングで家族みんなが楽しむシーンでは、達成感よりもその場の盛り上がりの方が求められるのではないでしょうか。
また、子ども同士の話題としては、ゲーム体験の共有の方が必要かもしれません。一人だけゲームの途中でつまずいて先に進めない状況では、友達同士の会話についていけない恐れがあります。


とりあえず「クリアしたことにする」。
コミュニケーションの触媒として求められているユーザーニーズをキャッチアップした機能だと思います。
・・が、子どもの頃、寝る間を惜しんで遊んでいた古いタイプのゲームユーザーとしては、ちょっと寂しいが気がしないでもありません。

宮城 禎信

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