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住まいのインテリアで季節を感じる

 まだまだ風の冷たい日はあるものの、陽ざしに春を感じる季節です。あちこちから花の便りも聞かれますが、みなさまのお家の中には春は来ていますか?
 都市生活研究所では、「住まい」に関する様々なデータを集めています。その中から、今回は「インテリア」に対する実態と意識をご紹介したいと思います。

<データ出典:生活分野別定点調査2013② 2014年1月>


 まず、季節に応じたインテリアの変化ですが、図1の通り、「季節に合わせて装飾品を変えたり、カーテンやカバー類を変えたりしている」ご家庭は、年代が上がるほど割合が高くなっています。同様の傾向が表れているものとして、「趣味の食器などを飾りながら収納している」「旅行のお土産を飾っている」があります。
 確かに、シニアの素敵なリビングルームには、ガラスの食器棚にお揃いのティーカップやティーポットが並んでいるイメージがあります。そしてお家の中のあちこちに、旅行先で入手されたと思われる小さな工芸品やアートが、さりげなく飾られている様子が目に浮かびます。
 そのようなインテリアに彩(いろどり)をプラスするものとして、「季節感」があるのでしょう。家の中に生花を飾ることも多いシニア層ですが、季節のお花を飾ったり、飾り物やファブリックの色や素材を変えたりすることで四季を感じ、毎日の暮らしを楽しんでいるようです。


図1 インテリアに関して行っていること


 シニア層と比較して、上記の項目を行っている率が低い若年層ですが、インテリアに興味がないのかというと、そうとも言えないようです。図2の通り、「インテリアは自分で選びたい」と思う人は、シニア層と同等かそれ以上に多くなっています。「インテリアのテイストを揃えたい」については、若年層にそう思う人が多く、家の中を自分好みのテイストで揃えることには積極的であることがわかります。また、「手ごろな価格のインテリアをこまめに買い替えて使いたい」においても高めになっているように、お金はかけずに、ちょっとしたもので自分らしく楽しみたい気持ちがあるようです。


図2 インテリアに対する考え方


 図2は希望を聞いたものですので、実際には実現できていないかもしれません。仕事や子育てなど日々の生活に追われ、時間的にも精神的にもゆとりを持ちにくい若年層は、季節感やインテリアにこだわりたくても、なかなかその余裕がない人が多いと思われます。


 しかし一方で、その忙しさの中に、子どもの春休み・夏休み、入学・卒業・進級などの節目があったり、会社の人事異動・昇進、転勤などが決まった時期にやってくることで、季節の廻りや1年1年の移り変わりを実感しやすいのは、現役で子育てをしている若年層の方ではないでしょうか。


 子育てが終わりリタイアしたシニア層では、時間的なゆとりと精神的なゆとりが増加することから、図1のようにインテリアを楽しむ傾向が高まると思われますが、それと同時に、半ば強制的に訪れる子どもや会社関係の変化がなくなることで、逆に自ら強く「季節を感じ、楽しむこと」を意識するようになるとも考えられます。
 インテリアに季節感を取り入れたり、旬の食べ物を味わったりする楽しみは、そのような自発的な意識があってこそ、なのかもしれません。


 インテリアに季節を取り入れる余裕のない暮らしをしている私でも、道端に咲く花に足を止めて、深呼吸してみるくらいはできそうです。四季に恵まれ、五感で季節を感じることのできる日本に暮らすありがたみを感じられるよう、少しだけ歩を緩めたい春です。

木村 康代

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