インタビュー

「一つのことを極めることが、本当の意味のライフスタイル提案につながる」 フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー 松延友記氏

Interview & Text 稲垣勝之、三戸千穂


ブルームコンセプトの小山龍介さんから「学芸大におもしろいコインランドリーができたよ」と言われていた。それから1年、妻のママ友たちなどからも「おしゃれなコインランドリーがある」「カフェもあって落ち着けるらしい」「スニーカーも洗えるし、ワークショップもあるみたい」などいろいろな噂を聞いていたフレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー。
目黒区学芸大学にある「前向きなココロとライフスタイルがつくれるようなモノ、コトをランドリーシーンから」をモットーにしたドイツ・ベルリン発、新しいランドリーの概念の"ウォッシュサロン"。カフェを併設し、洗濯の時間を通して人々が集うコミュニティを提供。コインランドリーの他、洗濯代行、クリーニング、デザイン性・機能性を兼ね備えたランドリーグッズの販売やワークショップを行っている。
フレディ レック・ウォッシュサロンといってピンとこなくとも、雑貨好きであれば、フレディ レックのブルーのロゴを見たことがある方は多いかもしれない。
今回は、ガス乾燥機の良さを存分に使って、昨今の都市生活者のライフスタイルにあったサービスを提供しているフレディ レック・ウォッシュサロン トーキョーのプロデューサーである松延友記さんにお話を伺うことにした。


 

なぜおしゃれなランドリーグッズはないのか?おしゃれなランドリーグッズをお客さまに

稲垣 早速ですが、松延さんがこのウォッシュサロンをはじめられたいきさつを教えてください。


20181002-1.jpg 松延 私たちは、コインランドリーを運営している会社でもなく、カフェを運営している会社でもなく、洗濯機や衣類乾燥機のメーカーでもなく、東京ガスさんのようなエネルギー会社でもなく、もともとは、家具と家庭用品などのインテリアの商社です。メーカー、卸し、小売りという商流の真ん中の卸しを担っています。その中で私は家庭用品担当でした。家庭用品はキッチン、バス、トイレ、ランドリー、清掃、収納などのカテゴリーがあるのですが、10年くらい前は、他の分野に比べてランドリーの分野は、デザイン性のあるものはほとんどなく、メーカーさんとバイヤーさんと話していても価格の話しかしていませんでした。そんな中、今は亡き先代のオーナーが「成熟してきた時代にそれはないだろう」といい、おしゃれな服などのファッションを洗うものなら、それにあった価値観で取り組んでみようということで、ランドリープロジェクトが立ち上がり、私がその商品企画を担当したのが始まりです。2008年のことでした。
どう進めていこうかと悩んでいるときに目についたのが、2008年12月号『pen』のフレディ レック・ウォッシュサロンの特集でした。記事を読むとドイツにおしゃれなコインランドリーがオープンして、物販もやっているとあったので、商社としては、これを輸入すればこのプロジェクトも簡単に終わるんじゃないかと軽い気持ちで思ったところが始まりでした。


稲垣 偶然の出会いですね。その後、どうされたんですか。


松延 そうなんです。本当にたまたま社内の回覧で見て。その後、2009年3月にドイツにとんでフレディ レックに会いに行き、ランドリーをやりたいのではなく、商社として、おしゃれなランドリーグッズを日本で展開したいと話すと、フレディ レックからすぐ快諾をもらえました。そして、自社の展示会で10アイテムほど出したら、まわりがかなりザワつきました。


稲垣 ここにあるものがそうですか。これはドイツから輸入したものなんですか。


20181002-2.jpg 松延 いや違います。ロゴなどデザインコンセプトのレギュレーションだけフレディ レックと決めて、プロダクトはわれわれで日本にあうものにしました。なぜなら、海外と日本では洗濯の文化が異なるからです。ドイツはお湯洗濯の文化なので洗剤も粉、天日干しの文化もなく乾燥機が主流。日本は水での洗濯を想定した液体洗剤が主流だし、干すためのグッズがランドリー分野の主軸だったので、それらを開発しました。なんといってもわれわれは卸しだったので、どこでどういうものがつくれるか知っていましたから。これはメーカーさんだったらできなかったと思います。バスケットをつくっているメーカーと、ピンチハンガーをつくっているメーカーと、おけをつくっているメーカーはみんなバラバラなので、商社であるわれわれだったからこそできたことだと思います。


三戸 全然簡単に終わってませんね。
もともと日本に既存であったプロダクトにデザインをつけたということでしょうか。


松延 そうですね。エプロンやバッグなど、少量からつくれるものは、全く新しくつくったりもしましたが、金型を伴うプラスチックや金属性のものは、新しい金型を起こすだけで数千万円かかるので。今は使っていない型なども使ったりしました。
あの一番大きなバスケットもそうです。70年代のまだ大家族の時のもので、核家族化になり廃番になっていたものを復刻しました。ねらっていたわけではないんですが、ちょうど平日忙しく洗濯できない人が週末にまとめ洗いをするのに適した大きさとなりました。


 

おしゃれなだけでなく、働く女性にあった機能性も兼ね備えたものを

稲垣 はじめから働く女性をターゲットにされていたんですか。


松延 いえ違います。はじめは自分がアパレル出身ということもあり、ファッションを大切にし、だからランドリーグッズもおしゃれなものが欲しい層をねらっていました。2010年にローンチ(=新商品の発売)したのですが、はじめに反応したのはアパレルでした。おしゃれなランドリー雑貨がある、ということで火がつきました。


三戸 現在のようなターゲットに向けたものになったのはいつ頃からでしょうか。


松延 2011年頃からでしょうか。東日本大震災の影響もあって、丁寧な暮らしブームの中で、われわれのグッズもただかわいいだけでなく、暮らしの道具として使いやすいものとしてお客さまからキャッチアップしてもらうようになり、ターゲット層も変わってきました。
雑貨業界と家庭用品業界は実は似て非なるものなんです。雑貨はおしゃれだけど品質管理が甘い、一方で、家庭用品は、家庭用品品質表示法という法律もあるくらいで品質管理がしっかりしているがデザイン性がない。もともと私はアパレル出身だったので、雑貨寄りのおしゃれさから入ったのですが、当社は家庭用品業界の品質を大切にするマインドが根底にあったので、品質がしっかりしていて、かつデザイン性も優れているものをお客さまに提供することができました。


稲垣 時代にあったということですね。今でもおしゃれでかつ使いやすい機能的なランドリーグッズを探すのはなかなか難しいです。そうした中で御社はブルーオーシャンを見つけたわけですね。


松延 そうです。そうした中で、コインランドリーが増加してきました。これは、単身赴任者や学生などの洗濯機が家にない人が増えたわけではなく、働く女性の利用率が増えたからだと分かってきました。働く女性にとって家事をどう効率化するかは大きな課題です。さらに、洗濯が他の家事に比べて、達成感を得にくいこともあり、だったら、洗濯という家事を、できるだけ効率的、おしゃれに、かつ達成感のあるものにしてあげればよいと思いました。だからそれを具現化できるフレディ レック・ウォッシュサロンの概念を日本でも展開することにしました。だいぶ長くなりましたが、これがいきさつです。

図 洗濯が好きだ


 

ランドリーシーンから、ライフスタイルを提案していきたいという想い

稲垣 おしゃれでかわいいだけでなく、機能や使いやすさを追う姿勢は、御社の商社としてのマインドからきていることがよくわかりました。機能や使いやすさというところでいくと、布団洗濯やスニーカー洗濯もおもしろいと思いました。


松延 ありがとうございます。スニーカー洗濯は専用の洗濯乾燥機に専用の洗剤をつかっています。子育てママたちは、お子さんの上履きも洗濯されていますよ。


20181002-4.jpg 三戸 それはいいですね。あれすごく大変なので。近くにこういうところがあったら使いたいです。使ってみたいサービスとしては、洗濯代行もあります。これは何でも洗えるんですか。例えば、下着はダメだとか。


松延 下着も大丈夫です。基本、私どもがもっている機器で洗濯乾燥できるものはお断りしていません。洗濯の中でめんどうで、嫌な行動として、干す、畳むがあります。干すのは日焼けが気になり、ベランダに出ることを躊躇する女性も多いはず。洗濯代行ではその干す、畳むまでをやっています。



図 あなたは、次の作業を面倒だと思いますか


稲垣 洗濯に限らず、家事代行と聞くと、"手抜き"というイメージがあり、使う方々に罪悪感を抱かせるようです。その辺りはどのように思われますか。


松延 そうですね。でも、このウォッシュサロンにくると、洗濯代行を"手抜き"ではなく、"手間を省く"ものとしてイメージできるようですよ。"丁寧な暮らし"を実現できるからよいと。


稲垣 ワークショップも開かれていますね。どんなことをされているのですか。


松延 『洗濯ナイト』とタイトルをつけてやってます。ランドリーという軸をぶらさず、参加していただいた方が「へぇー」と言ってくださるような、「目から鱗が落ちる」ような内容をやっています。
第一回は、タオルについて、みなさんタオルをどうやって洗ってますか、というテーマで、今治のタオルメーカーさん、大阪の洗剤メーカーさんとやりました。お気に入りのタオルを1枚もってきてもらってためしてもらいました。男性2割、あとは30、40代の女性がほとんどで30~40人が参加してくれました。


三戸 タオルはどう洗うといいんですか。


松延 タオルはタオルだけで洗ったほうがよいです。汚れた服など混ぜるとダメです。タオルは、汚れのひどいものほど強い洗濯は必要ないので。洗剤は、粉石けんがよいです。合成洗剤だと界面活性剤という汚れをとる成分がタオルの糸の真ん中まではいって、タオルの繊維が細くなってささくれ立ちます。それを補うためにみなさん柔軟剤を使うのですが、これは肌触りはよくなるんですが、繊維がコーティングされるので、水を吸わなくなるんです。タオルの機能をはたさなくなりますよね。一方、粉石けんだと油脂が生地に残りながら洗浄するので、水を吸う効果は残したままふんわり感につながるんです。


三戸 へぇー、そうなんですね。乾かし方はどうでしょう。


松延 乾かし方は、70~80℃でクルクルまわしながら行うガス乾燥機がベストです。においの元である雑菌を殺すことができるので。日本はお日様信仰があって、天日干しをよしとされる方が多いですが、断然ガス乾燥のほうがいいですね。


稲垣 家庭用のガス乾燥機「乾太くん」を販売している東京ガスとしてもよい話が伺えました。


松延 その次は"オキシ漬け"をテーマにしました。オキシクリーンって知ってますか?


稲垣 いやあ、知らないです。何ですか?


20181002-6.jpg 三戸 つけおきできれいにできるやつですよね。雑誌などで、こちらのおけを使っているのを見たことがあります。


松延 そうです。メーカーのオキシクリーンさんが、うちのウォッシュタブをプロモーションに使ってくれていて、それを三戸さんは見られたんだと思います。そうした縁で、オキシクリーンさんとコラボして、ワークショップをしました。ワインの汚れやソースの汚れのついたTシャツのオキシ漬けを参加者の皆さまに体験してもらいました。
ランドリーという一つのことを極めていると、いろいろな人から声がかかり、業界の垣根を超えた提案ができます。そうした積み重ねが、本当の意味のライフスタイル提案になっていくと思うんです。


 

『あなたとずっと 今日よりもっと』

稲垣 私どものコーポレートメッセージは『あなたとずっと 今日よりもっと』というものです。今まで続けてきたよいものは継承していくとともに、それ以上のものを生み出し、生活者によりよいものを提供していきたいという意味です。松延さんにとっての『ずっと』『もっと』にあたるものは何ですか。


松延 コインランドリーはもともと地域に根づいてきたもの。新しい形態であっても、わたしたちも「ずっと」地域に根づいた存在であり、地域の人たちと「ずっと」一緒にいたいと思います。
「もっと」というところでいうと、まだまだ、ウォッシュサロンの良さ、例えば、洗濯代行のサービスなどを知らない方もたくさんいるので、1人でも多くの方にその良さを伝えていきたいです。ワークショップに参加したみなさんが言う「ああそうだったんだ」をたくさん伝えて、地域の人たちと「もっと」豊かになっていけたらいいなぁ、と思います。


三戸 今後、そうした「もっと」を伝えていくために、店舗を増やしいていく予定ですか。


松延 そうですね。日本のまちづくりは、まだまだ男性が働き、女性は専業主婦というライフスタイルを基準としたものになっているように思えます。公共サービスでさえ、窓口の時間が限定的で、誰がこんなサービスを使えるんだと思うことが多いです。ですので、共働き世帯や、単身者等、現在のライフスタイルにあった支援をするためのウォッシュサロンを広めていきたいです。特に、働く男女の住みやすいまちづくりを率先してやっている自治体には積極的にでていきたいです。


 

ガス乾燥機の良さを、業界を超えて一緒に生活者に伝えたい

20181002-7.jpg 稲垣 私どもはその名の通り、都市ガスを、最近では電気も売り始めたエネルギー会社です。松延さんから、エネルギー会社に期待することは何ですか。


松延 違う業界である、わたしたちと東京ガスさんで、生活者にとってよいこと、「ガス乾燥機の良さ」を、広く伝えていけたらよいと思います。先ほどお話したように、洗剤メーカーと、タオルメーカーとわたしたちといった、違った業界のものが一緒になって生活者にとってよいものを伝えることが、一番大切なものを伝えられるからです。
都市ガスを供給する東京ガスさんと、ウォッシュサロンを提供するわたしたちが、どちらもハード、どちらもソフトの両面から生活者のライフシーンにあったコト、モノを提供したいですね。


三戸 それはすばらしいですね。その他に何かありますか。


松延 もう一つは、日本の洗濯に関わる家庭事情を変えられないかということです。お風呂にガスがきているのに、洗濯機にはガスがない。つまり、海外のように洗濯にお湯が使えないことが多い。実際、お湯を使うために、電気で行っている場合も。ケトルではないのだし、せっかく家庭に都市ガスがきているのに、もったいない気がします。


稲垣 これも、先ほど、松延さんがおっしゃっていた業界視点ではなく、生活者視点でものごとが考えられるようになるべきだということにつながると思います。エネルギーを供給する会社と、住宅をつくる会社と、洗濯機等の住宅設備をつくる会社が、業界を超えて、生活者視点で考え、行動していかないといけませんね。


松延 そうですね。


稲垣 まずは、今後、松延さんがこのウォッシュサロンの2号店、3号店をつくられる時に、ぜひ、ガスだけではなく電気の供給や、その延長にある都市生活者のみなさまへのライフスタイル提案を、東京ガスと一緒にしていけたらよいですね!

インタビューの途中にも、たくさんのお客さまが来店されていた。外国人は近くにあるホテルクラスカの宿泊者だろうか。松延さんは、お客さまがくれば挨拶をかわし、困っていれば声をかけていた。一つのことを極めることが、いろいろな人を巻き込み、より複層的なことができ、結果、真の意味のライフスタイル提案ができるのだと語っていた松延さんの笑顔は本物だった。
東京ガスも様々な生活価値提案をして、お客さまに「いいな」と思ってもらえ、それによって東京ガスを選んでもらうことを目指している。私たちも松延さんのような本物の笑顔をお客さまに向け、お客さまの笑顔が見られたら最高である。


20181002-8.jpg フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー
東京都目黒区中央町1丁目 3-13
生活者がライフスタイルをより創造的に向上させるためのサポート役を目指す、名古屋に本社をおく家庭用品・家具・インテリア総合商社である、株式会社藤栄が2017年7月にオープン。
「前向きなココロとライフスタイルがつくれるようなモノ、コトをランドリーシーンから」をモットーにしたドイツ・ベルリン発、新しいランドリーの概念の"ウォッシュサロン"。カフェを併設し、洗濯の時間を通して人々が集うコミュニティを提供。コインランドリーの他、洗濯代行、クリーニング、デザイン性・機能性を兼ね備えたランドリーグッズの販売やワークショップを行っている。

URL:https://www.freddy-leck-sein-waschsalon.jp/waschsalontokyo


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