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 「若いときは一人の時間が大切に思えても、年を重ねて様々な不安が増えていくと、一人よりも誰かとの交流する時間を大切にしたくなる―」このようなイメージを漠然と抱いていたが、それが正しくないことが今回の調査でわかった。団塊世代以上の年配層も、「一人の時間」をとても大切に思っていたのである。

家族との時間も一人の時間も大事
 「今後の生活をどのように過ごしたいと思いますか?」という問いに対して、「一人の時間を大切にしたい」と回答した人は、団塊の世代では73%、それより上の世代では77%を占めた(両者に有意差は無い)。調査対象者に、一人の時間の確保が難しい大家族が多かったからではない。夫婦のみの世帯や小家族でもこの傾向は強い。しかしその一方で、「配偶者と一緒に暮らしたい」、「家族との時間を大切にしたい」という回答はさらに多かったことから、「家族交流と一人の時間の両方をどちらも大切にしたい」という考えが伺える。他人との交流ニーズはどうかというと、「地域の人と交流」や「友人と家で交流」を望む人は半数程度であり、一人の時間のほうがはるかに大切に思われがちなようだ。長年仕事で他人に気を遣い続けてきた夫は、老後は妻との時間を大切にしながら、一人で自由きままに過ごせる時間も大切にしたいと思うのだろう。また、子どもが成長してやっと一人の時間が持てるようになった妻は、開放感をそのまま維持していきたいという思いが強いのではないだろうか。

一人の時間は自分の部屋か図書館でのんびりが理想
 「一人の時間を大切にする」とは具体的にどういうことだろうか。CHAIDの分析法により他の質問との関係を見てみると、「一人の時間を大切にしたい」と回答した人は、老後の住まいで「自分の部屋を持つこと」や「近所に図書館があること」を重視している人に多いことがわかった【図1】。

 つまり「一人の時間」とは、自室か図書館などで過ごす時間がイメージされている可能性が高いのである。そもそも自分の部屋を持つことを重視する人は非常に多く、「やや重視」も含めると今回の対象者の8割以上も占めている。また、近所に図書館があることを重視する人も「やや重視」を含めて半数以上である。そういえば、平日の昼間の図書館には、年配層の男性の利用者が非常に多い。図書館を愛用している知人の観察によれば、年配層の男性は常連同士でもお互いに会話を楽しんだりはせず、それぞれ黙々と一人の時間を過ごしているという。時事通信社が本年行った調査によると、60歳以上では2割の人が週1回以上図書館に通っており、50代以下の13%前後に比べて多い。また、その利用目的は50代以下では「本や雑誌を借りるため」が圧倒的に多いが、60代は「館内で読むため」という回答が比較的多い。団塊の世代が60代を迎える今後、個室や図書館またはそれに変わる快適な一人の空間の充実が益々求められるだろう。

 

早川 美穂(はやかわ みほ)
専門・得意分野
住生活、食生活、入浴スタイルなどライフスタイル全般。定量調査の他、国内外の家庭で浴室やキッチンにまで入り込んだヒアリング調査を数多く実施している。インテリアコーディネーター。
代表的な著書・レポート
「お風呂大好き!」(生活情報センター)/「ヨーロッパ食生活事情」 「現代人の入浴事情」 /「バス・リラクセーション」