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 わが国のベビーブーマーである「団塊世代」は、友だち夫婦と呼ばれ、男女平等が進んだ世代である。しかし、実は、性別役割分業、専業主婦化が進んだ世代でもあり、日本女性史上、家事育児に専念した女性の割合が最も高い。子育てが一段落した後、自分の時間を取り戻し、パートとして働きに出たり、学習や社会活動に参加していった人が多い。
  一方、団塊世代の男性たちは、戦後の復興から高度成長期をつくりあげた「企業戦士」に続き、高度成長期から安定成長の達成を「会社人間」として支えてきた。会社への思い入れは、団塊以降の世代に比べて強く、家庭や地域、「個」としての生活は二の次だった。今50代の中核となり、数年後からその多くが順次定年を迎え、新たな人間関係を作っていくことになる。

団塊男性の人間関係は、職場の関係に集中
 今回の調査で、団塊世代(1946〜50年生まれ)と60歳以上の人に、「同居家族以外の人と、お茶やお酒、食事を一緒にすることがありますか」と尋ねたところ、団塊の男女と60歳以上の女性では約9割、60歳以上の男性でも8割強が、「ある」と答えた。
  それはどのような関係の人かと聞いた結果が、【図1】の横軸の値である。

女性のトップは、団塊も60歳以上も「趣味やスポーツ、習い事を通じての友人」(団塊54.0%、60歳以上68.8%)で、同じ楽しみや志を持つ人との関係である。すなわち、「個」の領域における、お互いに自由に選びあえる選択的なヨコ型の人間関係=ネットワークであり、職場や旧来型の血縁、地縁という拘束性の強いタテ型の関係ではない。
  一方、男性のトップは、60歳以上でさえ、「職場や仕事関係の人」(団塊70.3%、60歳以上57.1%)である。特に団塊男性の人間関係は、ここに集中する。

「会社」から「個」の人間関係への転換
 肩書きもなくなり、劇的な生活変化に直面せざるを得ない「会社人間」たちは、今後、どのような人間関係を作っていきたいと考えているのだろうか。【図1】の横軸に「同居家族以外で、現在、飲食を共にする人間関係」、縦軸に「今後、飲食を共にしたい人間関係」の割合を、団塊と60歳以上の男女、4グループについてプロットした。
  団塊男性では、補助線からの乖離幅が最も大きく、特に、上方の『趣味』の人間関係と、下方の『職場』の人間関係が際立っている。現在は働き盛りで人間関係が『職場』に集中しているが、今後は「個」として『趣味』の人間関係を構築していきたいという強い意思が読み取れる。『職場』を通したタテ型の人間関係から、「個」としてヨコ型の人間関係へ転換を図ろうとする、「会社人間」からの自立の覚悟ともいえるだろう。
  『職場』から『趣味』への人間関係の転換は、団塊女性にも、60歳以上の男性にもみられる。また、団塊女性では、『子ども』を通じた関係が補助線の下方にあることが特徴的で、これは、子どもを通じた「○○チャンのお母さん」という関係を今後は縮小させたい意向を示している。

妻にも依存しない、「個」としてのネットワーク作りへ
 グループインタビューでは、団塊男性は、定年後は妻と一緒に行動したいと望むが、団塊女性は、友人との観劇や美術館めぐり、ボランティアへの参加、外国人との交流など、人との関わりを大切にしていきたいと述べている。妻の関心は、今後も外に向いている。
  「会社人間」から自立し、妻にも依存しない、「個」としての人間関係=ネットワークを今後どのようにつくっていくかが、団塊男性にとって重大なテーマとなるだろう。

<参考文献>
天野正子編、2001『団塊世代・新論―<関係的自立>をひらく』有信堂高文社
落合恵美子、1997『21世紀家族へ(新版)』有斐閣
上野千鶴子、1994『近代家族の成立と終焉』岩波書店
上野千鶴子・電通ネットワーク研究会編、1988『「女縁」が世の中を変える』日本経済新聞社

 

松島 悦子(まつしま えつこ)
専門・得意分野
食生活、洗濯・乾燥、環境問題(環境社会学)。米国居住や、食品メーカーと流通での勤務経験を活かして研究分析。生活者へのヒアリング、グループインタビュー。消費生活アドバイザー。
代表的なレポート
「子育て中の女性同士の『共食』〜うちで一緒にごはん食べよう!」/「手づくり料理に関する意識調査〜手づくり料理の概念が広がっている」 /「50・60代の夫の料理と妻の意識〜夫の料理は夫婦円満の秘訣」 /「中高生の食生活と料理〜料理をする子はポジティブ志向」