vol.006

カラダPhysical

意外!?睡眠の質に影響するのは、
実はこの部屋だった。

寒い季節、心地よい眠りのために工夫していることはありますか?一般的に、暑くて寝苦しい夏よりも布団の中の温度を整えやすい冬の方が睡眠の悩みが少ない季節と言われています。そのため、冬の睡眠に悩みを感じていない人も多いのではないでしょうか。しかし、不眠の自覚がなくても、寝室が寒いと自律神経系に支障をきたすとも言われており、寝室環境を整えることはとても重要です。さらに驚くべきことに、最新の知見では、寝室だけでなく、寝る前に過ごす【居間の温度】が寝つきに影響することが分かってきました。そこで、今回は「寒い季節に良質な睡眠を得るためのおすすめな過ごし方」をご紹介します。

就寝前に過ごす居間
環境にこだわる人は少なく約2割

「冬に睡眠の質を高めるために環境を整えている部屋」についてアンケート調査したところ、寝室と回答した人が82%と最も多く、居間は21%、脱衣室や廊下は5%未満と低い結果となりました。寝室に気をつかうことはあっても、それ以外の環境までこだわる人は少ないようです。また、「良い睡眠のために気をつけていることは?」という質問に対しては、「暖かい布団を使う」、「湯たんぽを使う」、「足を冷やさないようにする」、「お風呂に入る」という回答が多く見られ、寝つきを良くするために、身体を冷やさないようにしている人が多いようです。

冬に睡眠の質を高めるために環境を整えている部屋は?
冬に睡眠の質を高めるために環境を整えている部屋は

「東京ガス調べ(2020年11月)」

就寝前の2時間、居間が寒いほど寝つきにくい

一口に睡眠の悩みと言っても、寝つきにくさ、夜間の眠りの浅さ、目覚めの悪さ、日中の眠気など数多くあります。その中で、特に冬の睡眠の悩みとして多いのが、手足が寒くて眠りづらい等、寝つきに関わるものです。では、どうしたら寝つきを良くすることが出来るのでしょうか。
国土交通省が約4千人に対して実施したスマートウェルネス住宅等推進調査によれば、入眠にかかる時間(入眠潜時)が長い人ほど、就寝前に過ごす居間の室温が低いという結果が得られています。就寝中の寝室の温度よりも就寝前の居間の温度に大きく影響を受けることは驚くべきことですが、寝つきの課題を抱えている人は就寝前の過ごし方のヒントとして、居間を暖かくして過ごすようにしましょう。

入眠にかかる時間で分類したグループごとの就寝前後の平均室温の比較
入眠にかかる時間で分類したグループごとの就寝前後の平均室温の比較

出典:国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査
「住宅の断熱化と居住者の
健康への影響に関する
全国調査第4回中間報告会報告書」をもとに東京ガスで作成

睡眠障害がない人も居間が寒くなると、睡眠障害発症を1.4倍助長

ところで、就寝前の居間が寒いと睡眠にどれくらい影響があるのでしょうか。
もともと、睡眠障害のある人にとっては、就寝前の居間の温度が低くなることで睡眠障害の改善を0.7倍にとどめ、治りにくくさせます。さらに、もともと睡眠障害のない人は、就寝前の居間の温度が低くなることで、なんと睡眠障害の発症率を1.4倍も助長すると言われています(出典1)

就寝前の居間が暖かくなると、過活動膀胱症状も改善

高齢になると、気になるのが夜間頻尿や尿漏れ等のいわゆる過活動膀胱症状。高齢のご両親やご家族など周りで困っている人はいませんか。就寝前の居間を暖めることにより、睡眠の質が改善するだけでなく、こういった高齢期特有の症状も改善します(出典1)。夜、尿意のために目が覚めて、トイレに移動するときに転倒するなどの心配も減り安心です。意外にも居間の温度が様々な症状に影響するのです。

居間も寝室も最低でも18℃以上がおすすめ。

それでは、部屋の温度はどのように調整したら良いのでしょうか。2014年に厚労省から出された睡眠指針では、寝室の温度を13~29℃にするように推奨されています。また、英国保健省が循環器系疾患、呼吸器系疾患等の健康障害への対策として定めた指針によれば、居室温度は18℃以上にすることが推奨されています(出典2)。日本は欧米に比べ、住宅の断熱性能が低いので、壁や床が冷たい場合には、もっと高めにする必要があるでしょう。

ふろふき大根

室温は暖かく
最低でも18℃以上に!

  • ●18℃未満
    血圧上昇、循環器系疾患の恐れ
  • ●16℃未満
    呼吸器系疾患に対する抵抗力低下

おわりに

おうちで過ごす時間が増えた今、睡眠のための環境づくりも注目されています。今回は、最新の知見をもとに、就寝前の居間の環境を整えることの重要性をご紹介しながら、「寒い季節に良質な睡眠を得るためのおすすめの過ごし方」をご紹介しました。寝室に加えて、居間の環境も整えながら、睡眠の質を上げて寒い冬を乗り切りましょう。

出典1. 国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査第4回中間報告会報告書」
出典2. イングランド公衆衛生庁「イングランド防寒計画(Cold Weather Plan for England)2015.10

執筆者:東京ガス都市生活研究所 統括研究員/睡眠改善インストラクター・温泉入浴指導員 藤村 寛子

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東京ガス都市生活研究所は、1986年7月に設立されました。社会の変化や都市に暮らす生活者についての多面的な調査・分析をもとに、将来のライフスタイルやニーズを予測し、生活者が豊かな暮らしを創造するための情報を提供すると共に様々な提言を行っています。