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『かささぎ』(Claude Monet ,1868)

 2007年1月に、日本で5番目の国立美術館として、六本木に開館した「国立新美術館」にて、現在、「大回顧展 モネ――印象派の巨匠、その遺産」が開催されています。これは、フランスのオルセー美術館をはじめ、アメリカのボストン美術館やメトロポリタン美術館など、国内外の主要コレクションから、100点近いクロード・モネ(Claude Monet)の代表作が一同に集められ、モネならではの光の描き方や色彩感覚、構成などを作品と共に検証し、その芸術の全容をたどるというものです。

 今さら説明するまでもありませんが、モネは、印象派を代表するフランスの画家で、時間や季節とともに移ろいゆく光を中心に、独特の色彩感覚、構成を追求したため、「光の画家」とも呼ばれています。
 絵画のことにあまり詳しくない私でも、モネの作品群をみていると、その美しさに惹きこまれてしまい、その情景の中の光や風を実際に感じ取れるような錯覚をし、非常に落ち着いた幸せな気分に浸ることができました。日本人の多くがモネの作品を好きであるのも、こうした時間や季節の変化を感じとることができることが大きな要因のように感じました。

 季節感や時間の移ろいを感じることは、人にとって大変重要なことだと思います。しかし、都市生活の中では、なかなかそうしたことを感じ取るために、外とのつながりを持つことが難しくなってきています。特に、最近の住まいは全館を均一に空調するために、窓を開けることもなく、風や光を感じることも侭ならない状態にあるのではないでしょうか。
 モネの絵のような感性は得られないにしても、少し、光の取り入れ方や、通風について考えてみるだけでも、かなり外とのつながりを持つことができ、多少なりとも季節感や時間の移ろいを感じとることができるようになると思います。

 当研究所が住まいに関して行った調査における自由回答を見ますと、「光」や「風」に対する要望が多く見受けられます。一方で、それを実現するための具体的な手段・設備については関心が薄いようです。
 例えば、光を取り入れるならば、窓を大きくするということだけでなく、光の取り入れにくい場所には、光ダクトなどを考えてみたり、風を取り入れるのであれば、窓あけができるような、空調とのマッチングを考慮してみたり、窓あけがあまりできなくても、換気システムなどを利用して、風の流れを作ってあげたりすることをほんの少し考えて、家づくりを進めてもよいのではないでしょうか。

 1868年、モネは、雪景色の光り輝く雰囲気と材質感を描くことに挑戦します。このとき描かれた代表作の1つに『かささぎ』という作品があります。白という「何もない」色彩と考えられてきた色のなかに、モネは限りなく微妙な色彩と階調を見出します。とりわけ雪という、それまで西欧人が「病んだ自然」としてモティーフに取り上げなかったものを素材に、そのニュアンスを描き出します。
 私たちも、普段、意味を深く考えず、何気なく見過ごしてきたものに、今一度目を向け、そこにしっかりとした価値を見出すことに努め、都市生活をより豊かにしていきたいものです。

『かささぎ』などを観ながら
(「大回顧展 モネ――印象派の巨匠、その遺産」 国立新美術館にて)
2007年5月

稲垣 勝之

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