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ターゲットは誰ですか

 最近とあるコーヒーチェーン店のエスプレッソがとても美味しく足繁く通っています。
 この店舗は、全席喫煙可能という近頃ではめずらしい営業スタイルをとっています。


 日本たばこ産業株式会社の調査によると2010年5月時点での喫煙者率は、男女合計平均で23.9%となっており、喫煙者の占める割合は4分の1を切る状況です。
 普通に考えれば、7割以上を占める非喫煙者のために禁煙、または分煙にすることが営業的にもよさそうです。


 この店舗は小規模なため、客席の分煙化はスペース的に厳しいのですが、そこで全面禁煙にするのではなく、あえて喫煙者をターゲットとしているようです。
 駅に隣接し、喫煙可能な空間が少ない都心の立地条件から、喫煙者のニーズを取り込んだ方がかえって多くの顧客を獲得できると考えたのではないでしょうか。


 商品やサービスの訴求では、ターゲットを広くカバーすることが望ましいのは当然ですが、一方で、誰もが狙うマジョリティ層をつかむには、より厳しい競合の中で他社との違いを打ち出していかなくてはなりません。また、ターゲットを広げようとするあまりに、ややもすると、様々なニーズを満たそうとして、かえっていずれのニーズに対しても中途半端な価値を提供する結果になることも考えられます。


 生活者のニーズを的確に捉えるだけでなく、ターゲットを定めて商品やサービスを具現化することがマーケティングの基本。
 あらためて大切なことだと再認識しつつ、今日もエスプレッソを飲んでいます。

宮城 禎信

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