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海外「食」事情レポート(3)新たな発見炎の調理の魅力

前号で、イタリアの一般家庭ではコンロの熱源はガスで、コンロの口数は4口が主流、5口、6口の場合もあり、デザイン性に優れていることをお伝えしました。それでは、そのコンロを使って、イタリアの女性たちはどんな調理をしているのでしょう。 ヒアリング調査 今回の調査では、 1. 30代から60代までのイタリア人家族世帯 2. 30代から50代までの日本妻・イタリア人夫家族世帯 3. 食の有識者 のところへ訪問しています。それぞれ、 1. イタリアの一般家庭の食生活を知る 2. 日本とイタリアの一般家庭の食生活の違いを知る 3. イタリアの食のトレンドを知る ことを目的として、ヒアリングを実施しました。 一般家庭の食生活の様子については、次号以降で詳細に紹介してまいります。今号では、有識者から伺った「イタリアの食のトレンド」について報告しましょう。 有識者が語るイタリアの食生活の今 フィレンツェでトスカーナ料理のお店を経営するマルゲリータさんからお話を伺いました。 <小西>(以下<小>)『最近のお客様の注文するメニューを見て、どんなことを感じますか?』 <マルゲリータ>(以下<マ>)『フィレンツェの住人をみていると、50才以下では働いている女性が多く、みな忙しそう。料理をする時間がない人が多いし。最近では、普通の家庭料理なんだけど、時間がかかってなかなか作れないもの、手間がかかるので家では作れないもの、例えばリボリータなどを注文する人が多いわ。』 <小>『以前は?』 <マ>『少し前までなら、外食は家では食べられないものを食べる場所だったの。家ではクラッシックな家庭料理を食べ、レストランには珍しいもの、新しいものを食べに来ていたわ。例えば、お店でトリッパを出す場合には、新しい味付けにしてみたり、提供方法に新規性をだしたりと、いろいろな工夫をしていたんだけど。イタリアの流行の最先端ミラノでも、少し前までは多国籍な料理が流行していたけれど、最近は伝統的な料理に戻ってきているの。豪華なレストランで、プレゼンテーションに凝ったカツレツがでてきたりするのよ。』 <小>『なるほど、レストランで手間隙かけた家庭料理が求められるようになったんですね。以前に比べ、材料や、調理法で、変化しているところはありますか』 <マ>『家庭料理というと、マンマの味だけど、オイルの量と煮込み時間に工夫をしているわ。オイルは少なく、煮込み時間は短く。最近は、健康志向の人が増えたから、ライトなものにするようにしているの。もちろん、材料を選ぶ時は季節感も大事にしているし、調味料も含め純正を重視している。例えば、スープを作る時は、スープの素は使わないで、本当の味だけでおいしさを出しているわ。何が入っているか、自分が何を食べているかを知りたいという欲求も高まってきているから。』 <小>『なるほど。それでは、イタリアの女性は、家庭ではどんな調理をしているんでしょう?』 <マ>『素材も、調理法もクラッシックなものは、稀なんじゃないかしら。煮込むことが減って、焼く調理が増えているわ。パスタ料理にはすごく興味があるみたい。』 時間や手間のかかるクラッシックな家庭料理が減り、さっと短時間でできる焼く調理が増えているというのは、とても興味深いところです。もともとヨーロッパは、コンロやオーブンでじっくり煮込む調理が多かったのですが、女性や家族のあり方が変わり、調理法も変わったということでしょう。日本では簡単調理が大流行ですが、イタリアでも簡単な料理が増えているということなのでしょうか。次号で、詳しくご紹介いたします。 マルゲリータさん 都市生活研究所 小西 雅子

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