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今後の住まいに影響を与える変化

日本の総人口は、予想より早く2005年にピークを迎え、減少過程に突入している。一方、住まいへの影響が大きいと考えられる世帯数は、今後しばらくは増え続けるが、2015年にピークを迎えた後、減少に転ずると推測されている。

人口が減少しているのにも関わらず、2015年まで世帯数が増え続けるということは、一世帯あたりの人数が減少するという世帯の変化が起こっている。1950年代に約5人であった平均世帯人数は現在2.56人と半減し、世帯数が減少に転じた2015年以降も平均世帯人数は減少を続け、2025年には2.37人になるとされている。

日本の世帯数の将来推計
<「日本の世帯数の将来推計」2003/国立社会保障・人口問題研究所>

世帯の変化はこれだけではない。世帯構成をみてみると、「単独世帯」が増加しており、今年最多世帯となる見込みである。また、「夫婦のみの世帯」や「ひとり親と子どもの世帯」が増加傾向にある。
「単独世帯」というと、学生や結婚前の若年層を思い浮かべる方も多いかもしれないが、高齢化に伴って、高齢者層の単独世帯が増加している。2005年時点で単独世帯のうち世帯主が65歳以上の世帯は約3割だが、2025年には約4割に達し、ひとり暮らしの高齢者の占める割合が高くなることが予想されている。

家族類型別世帯数
世帯主65歳以上の家族類型別世帯数
<「日本の世帯数の将来推計」2003/国立社会保障・人口問題研究所>

さらに、未婚率の上昇とともにパラサイトシングルが増加し、「親と子の世帯」として、高齢の親とパラサイトシングルの子という組み合わせが増加することだろう。

このように、今後も世帯はさまざまな変化を続け、それに伴って、より住まいが多様化していくと考えられる。
今までは、住宅取得層として、いわゆるファミリー世帯を対象とし、ニーズに対応した住まいが数多く提案されてきたのではないだろうか。現在、住宅取得期を迎えている30代ファミリーには団塊ジュニアが含まれるため市場として大きいが、今後は減少の一途をたどる。よって、今後はファミリー層以外にも目を向けていく必要があるだろう。
既に高齢化社会を見据え、シニア層への住まいやリフォーム等の提案はなされているが、その他の世帯を対象とした住まいの提案はまだ少ないように思われる。
将来的に世帯数が減少していくと予想されているが、社会や生活者の変化を詳細にみていくことで、新たな需要開拓や提案の可能性がみえてくるのではないだろうか。

※ 出典: 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口2006」
「日本の世帯数の将来推計2003」、総務省「国勢調査2005年
荻原 美由紀

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