都市研コラム

情報の伝え方の大切さ ~ 洗濯物の室内干しに見る効果

 都市生活研究所では、生活における様々な調査を行ない情報の提供や提言を行なっていますが、情報の提供には内容だけでなく、その伝え方についても配慮が必要だと考えています。2005年に都市生活研究所で行った「洗濯物の室内干しと乾燥機の使用意識」調査では、情報の伝え方によって、その後の意識への作用差が生じることが判明しています。

 この調査は、洗濯物の室内干し意識と乾燥機の使用意向について、浴室乾燥機ユーザーを4つのグループに分け、それぞれ、(1)教育的な情報、(2)実践的な情報、(3)両方の情報、(4)情報なしの4つのパターンのアンケートを作成、情報提供を行なうとともに一回目の調査を実施。そして、さらに2週間後の再調査によって意識変化を調べたものになります。

■提供した情報
(1)教育的な情報

(1)次の四角の内容は、湿気やカビ、ダニに関する情報です。必ずお読みになって、次の設問にお答えください。
梅雨や夏を快適に過ごすには、暮らしの中で余分な湿気を出さないことが重要で、洗濯物を部屋に干しても大量の湿気が出ます。5kgの洗濯物を洗って脱水後、室内に干すと、3リットル(牛乳パック3本分)の水分が部屋に放出されます。十分な換気をしないと、その水分が部屋の中にこもってしまいます。
洗濯物から発生した湿気は、ダニやカビの繁殖を盛んにしてしまいます。梅雨から夏にかけて気をつけないと、カビは秋に大量に発生します。
カビやダニは、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー症の原因になるといわれています。

(2)実践的な情報
(2)湿気対策として、換気や除湿のほかに、部屋に干さずに衣類乾燥機や浴室乾燥機を使用することも、強力な湿気対策となります。次の四角の中の内容は、浴室暖房乾燥機の使い方などに関する情報です。必ずお読みになって、下の問にお答えください。
お手持ちの温水式浴室暖房乾燥機で、2kgの洗濯物(夫婦2人分程度)を洗って、最初から最後まで乾燥すると、1時間半ほどで乾き、かかる光熱費はガス代と電気代を含めて約60円です。浴室がユニットバスの場合は、乾燥時間が約70分光熱費は約40円です。(なお、電気式の浴室暖房乾燥機の場合は、2kgを乾かすのに約170分、光熱費が約80円を超えるという実験値があります。)
完全にタオルを乾かすと、外干しで乾かしたようにバリッと乾きます。また、ドラム式のような機械力が加わらないので、衣類がしわになりません。
洗濯物を早く乾燥させるには、浴槽の湯を抜いてふたをする、洗濯物は温風が出る付近に乾きにくいものを干し、また、隙間を開けて干すとよく乾きます。急ぎのときは、浴室の床や壁をさっと拭いてから、少量だけ乾燥させることをお勧めします。


■調査結果
乾燥機の使用意向(情報提供前) n=1005

室内干しの回避意識(情報提供前) n=1005
乾燥機の使用意向(情報提供直後)
室内干しの回避意識(情報提供直後)
乾燥機の使用意向(2週間後)
室内干しの回避意識(2週間後)

情報提供直後の意識変化では、室内干しの回避意識・乾燥機の使用意向ともに上昇していますが、最も効果が高いグループは、回避意識で「教育的な情報のみ」のグループ、使用意向で「両方の情報」のグループとなっています。

一方、2週間後の再調査によると、回避意識についてはポイントが低下するものの上昇効果が残っていましたが、使用意向についてはどのグループもポイントが低下し、有意差がない状況になっています。

この結果から、室内干しの回避には「教育的な情報」が最も効果が高く、「実践的な情報」は効果が無いということが判ります。また、乾燥機の使用意向では「両方の情報」が最も効果が高いが、2週間後には効果が消えているようです。

原因については様々な要因が考えられますが、今回のケースでは情報の性質が要因のひとつと考えられます。
通常、利用者にとってプラスの便益を生む情報は、強く意識に作用するものと考えられますが、今回の調査についてはプラス情報(今回の教育的な情報)だけでなく、受け手によってはマイナス情報(今回の実践的な情報)となるものが含まれているため、このような結果が出ているのではないでしょうか。

教育的な情報では、室内干しのデメリットを回避すれば「健康や住宅に良さそうだ」という、誰にとってもプラスとなる効果を持っていると言えるでしょう。しかし、実践的な情報については、乾燥機の使用にかかる費用が見込みよりも高いと感じた場合や、そもそも室内干しと比べた場合は「純粋に費用負担増」になるというマイナス側面があります。

それゆえに、「実践的な情報のみ」のグループが、一回目、二回目とも情報提供による効果が無いという結果になったと推察できるのではないでしょうか。また、室内干し回避意識についても、「教育的な情報のみ」に比べて「両方の情報」のグループのポイントが低い傾向となっており、これも実践的な情報の持つマイナス効果が反映されているように見受けられます。

情報提供や提言を行なっていく際には、受け取り手が的確に判断できるよう多様に示すことが必要だと思いますが、多々の情報によって必要な情報が埋没してしまうことも否めません。そのため、提供情報の取捨選択を行なうことが常ですが、今回のケースのように、状況によっては、一部の情報のみでは効果が期待できないということもあるようです。
効果的に情報を伝えるためには、きちんと整理された情報を提供するとともに、情報の性質や組み合わせなど、伝え方についても考慮することが大切ですね。

宮城 禎信

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