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住まいのリフォームで変わる暮らし、変わらない暮らし~都市生活レポート「キッチンリフォームの現状とニーズ」より その1~

 4月、新たな年度が始まりました。入学、入社、転勤、退職など、今までの住まいから別の場所へ移り、新たな生活を開始した方も多いのではないでしょうか。住まいが替わる時、住む街が替わることで外での暮らしが変わります。そして家の造りが変わることで、中での暮らしも変わります。外と中、両方が一度に変わることは、楽しみも大きいですが不安やとまどいも大きくなりがちです。
 近年注目が集まっている住宅リフォームは、外での暮らしは変えずに、中での暮らしの一部を変えるものです。仮住まいをして住宅丸ごとリフォームされる方もいらっしゃいますが、多くの方は水周りなどの部分を、住みながら、つまり今までの暮らしを続けながらリフォームしているようです。


 都市生活研究所では、この「住宅リフォーム」について、生活者の視点から調査研究を行いました。都市生活レポート「キッチンリフォームの現状とニーズ」としてまとめた研究結果から、リフォームの実態や、リフォームに対する意識についてご報告していきたいと思います。第1回目の今回は、リフォームに踏み切った理由、踏み切れない理由についてご紹介します。


最もリフォームされる「キッチン」、リフォームを実施することが多い「50代~60代」を対象に調査研究を実施
 「リフォーム」と一口に言っても、内装の一部取替えから、骨組みを残して作り直すスケルトンリフォームまで、その規模や種類は多岐にわたります。そのため、対象を最もリフォームされることが多い「キッチン」に限定し、リフォーム実施者の中で高い割合を占める50代~60代の、キッチンを主に使う女性について研究を行いました。(比較として、30代~40代のデータも収集)
図1 リフォーム実施部位
図2 リフォーム実施者の年代別構成比

長年住み続けてきた家の、老朽化した設備や内装を、リフォームで新しくしたい
 5年以内にキッチンリフォームを実施した人を対象にWEB調査を行ったところ、50代・60代の7割以上が、築年数20年以上の住まいをリフォームしており、60代では築30年以上が2割を超えていました。(図3) また、これらの住宅は、その多くがかつて新築で入居した物件であったことが調査からわかっています。
新築以来数十年間暮らしてきた、なじみと愛着のある我が家のリフォームであることが、50代・60代のリフォームの大きな特徴であるといえます。
図3 リフォーム実施者の住まいの築年数


 このように住宅が老朽化している状況であるため、リフォームを考え始めた理由として、半数以上の人が「流し台や調理台、内装の傷み」をあげています。(図4)
 そして、これらの「傷み」や「汚れ」に我慢ができなくなることが、リフォームに踏み切る直接のきっかけになっているようです。(図5)
図4 リフォームを考え始めた理由
図5 キッチンリフォームを実際に行ったきっかけ


 さらに、50代・60代では、リフォームを行った際の生活の変化として、「子供の独立」や「定年退職」などがあげられる点が特徴的です。ライフステージが替わることで、経済的・時間的・精神的ゆとりを手に入れたことが、リフォームに踏み切ったきっかけのひとつになっているようです。


「とりあえず住み続けるのに問題はない」から、なかなかリフォームに踏み切れない
 「リフォームしたい」という思いは、住まいの老朽化に対する不満から生じることが多いようですが、実際に行動に移すことはそう簡単ではありません。不満を抱えたまま何年も過ごし、ついに機器が壊れてリフォームを実行する、といったケースが多く存在するようです。図6のとおり、リフォーム意向者の検討期間は、5年以上という人も少なくありません。


図6 リフォーム意向者の検討期間


 なぜ、なかなか実行に移せないのでしょうか。リフォーム未実施の理由のトップとなっている「とりあえず住み続けるのに問題はない」という回答は、不満はあるもののリフォームに踏み切れずに今までの暮らしを続けている人たちと考えられます。


図7 リフォーム未実施者の理由


 リフォームが単なる内装や設備の更新と捉えられている限り、「経済面や時間的な余裕ができたら」「とりあえず住めるから」と、先延ばしにする人は多いでしょう。
住み手にとってのリフォームの良さのひとつとして「今までの暮らしを続けながら、より良い暮らしを取り入れることができる」という点があげられますが、逆に「今の暮らしを続けながら」であることが、「リフォーム後の暮らし」をイメージしにくくし、リフォームによる変化への期待が高まらない可能性が考えられます。
 「リフォーム後の暮らしがイメージできない」ことから、リフォームに踏み切れない人が多いこと、また、たとえリフォームに踏み切っても、不満を解消する内装や設備の更新にとどまり、より良い暮らしを取り入れるリフォームを実現できない人が存在することが、現在のリフォームを取り巻く状況です。
 今までの暮らしを続けながら、新しい暮らしをイメージすることは、生活者にはなかなか難しいことです。リフォームによってどのような暮らしを実現できるのか、生活者が具体的に感じられるように工夫し伝えることが、住宅リフォームに関るすべての人に求められているのではないでしょうか。

木村 康代

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