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シェアハウス暮らし

 3月も終わりに近づき、間もなく4月。新学期や新年度など、お正月とはまた違った1年の始まりを迎えます。新生活を始めるにあたって、新居を構える人も多いのではないのでしょうか。私も繁忙期前にと、先日家を移りました。リビングやキッチン、バス、トイレなどと言った設備が共用のシェアハウスです。


 都市生活研究所では2009年に生活トレンド予測レポート「ハピシェア」を発行しましたが、その中で、他人とのシェアは経済面でのメリット、つまり自身の負担が軽減されることが大きな目的であるとまとめています。下の図は、2009年に行った調査結果の一つです。このグラフを見ると、経済面でメリットがあれば他人と何かを共用するのも構わないと考える人が半数近くいることが分かります。


図1.他人と何かを共有することに対する考え


 2009年ごろはまだそれほど多くなかったシェアハウスですが、その後ドラマやバラエティのテーマとして取り上げたメディアの力もあるのでしょうか、物件数は増え続け、現在ではシェアハウス専用の検索サイトも充実し、部屋を借りる際の選択肢の一つとしてすっかり定着した感があります。こういった他人とのシェアでお得に暮らしたいというニーズがここ5年で顕在化し、今はその受け皿が出来上がってきた状況であるように思います。


 「他人とシェアしてお得を得る」。シェアハウスはその典型であると言えるように思います。家賃だけを考えると、シェアハウスよりも安いアパートは意外と多くあるのですが、敷金礼金、仲介料といった初期費用のことを踏まえると、やはりシェアハウスの方が安くなるケースの方が多いように感じます。また、多くのシェアハウスでは水道光熱費、インターネット利用料金などを全て含めて共益費として一括で徴収しており、一定の価格に抑え、かつ家計の管理もしやすいことも経済的、と言えるのではないでしょうか。


 近頃は「経済的」に加え、もうひと押ししてくるシェアハウスをよく目にします。今月もまた新たに、子育て中のシングルペアレントと子育てを手伝いたい単身者が対象となる、子育て支援がコンセプトのシェアハウスがオープンしたというニュースを耳にしました。子育てをコンセプトにしたシェアハウスはこれまでにもいくつか登場していますが、子育てを応援したい単身者もターゲットに据えているというのは珍しいのではないでしょうか。
他にも音楽好きが集まるハウス、自転車好きが集まるハウス、独立起業を目指す若者が集まるハウスなど、さまざまなコンセプトをもったシェアハウスが生まれています。安さだけが決め手ではなくなってきているようです。


 ちなみに、シェアハウスでは共用部分の清掃は業者が行うところも少なくありません。自分がそれほど気にかけなくても家の中は一定程度清潔に保たれるので、ハウスによっては自身の手間や負担が大きく省かれます。その環境に慣れてしまって、まだしばらくはシェアハウス暮らしから抜けられそうにありません。


林真美

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