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夫婦で評価が分かれた「開放的なLDK」 ~60代夫婦が求める適度な距離感~

 都市生活研究所では、リフォームを行うことが多い年代として60代に着目し、60代のキッチンリフォームニーズをかなえる空間を作成。その受容性を評価する研究を行いました(詳細は都市生活レポート「生活空間コンセプトvol.5 50代・60代の住空間研究」をご覧ください)。今回はその内容の一部をご紹介します。


 空間を作成するにあたり、家族構成は60代の定年後の夫婦で子供は独立して別居しているものとしました。住まいは、築30年くらいの一般的な戸建住宅で一度もリフォームを行っていない設定としました(図1)。


図1.リフォーム前の住まい


 60代のキッチンリフォームニーズは「不満を解消し、今まで通り使えるキッチン」「みんなが使い易いキッチン」の2つにまとめられます(詳細は都市生活レポート「キッチンリフォームの現状とニーズ」をご覧ください)。これらのニーズを満たす空間について、リフォーム規模・予算を段階的に設定し、4つのプランを作成しました。その中で最も評価が高かったプランを代表として掲載します。こちらは、キッチンの位置は変えずに、ダイニングとキッチンと和室を大きなLDKにリフォームしたプランです(図2)。


図2.リフォーム後の住まい


■5つのポイント
(1)今後の体力低下に対応する「座って作業できるカウンター」
(2)ダイニングキッチンと和室を一体化した「開放的なLDK」
(3)突然の来客などの際には「キッチンが建具で仕切れる」
(4)趣味など多目的な利用が可能な「多目的カウンター」
(5)手が届きやすく掃除がしやすい「奥行きの浅いコンロ・収納」


 こちらのプランを、今後リフォーム予定のある、戸建て住宅に住む60代男女8名に評価してもらいました。その結果、5つのポイントのほとんどが高く評価されましたが、(2)の「開放的なLDK」は男女で評価が分かれました。男性は広々した開放的な空間は「ゆったりできる」と良いイメージを持ちましたが、女性は「来客時には良いが、普段夫と二人の時には度々顔を合わせてしまう」と評価が下がったのです。


 女性の評価が下がった理由として、定年後は夫婦共に在宅時間が長くなるため、特に妻は夫に気がねなく、夫に干渉されることなく別々に過ごしたいという声がありました。作成したキッチンリフォームプランは、60代が求めるキッチンの要件を満たしていましたが、60代の住まいには、それに加えて「夫婦が自立して自由な時間が過ごせる」よう、「適度な距離感」が保てることが大切なようです。


青柳 恵子

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