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やっぱり、ごはん

 あっという間に8月も下旬となりましたが、まだまだ暑い日が続いています。皆さまいかがおすごしでしょうか。
 私事ながら、夏は、自宅でごはん(米飯)を食べる頻度が減ります。私の好みでは、あったかいごはんに具だくさんの汁物をふぅふぅしながら食べたいので、冷たいものがおいしい夏は、冷麦やそうめんの消費量が大幅に増えるというわけです。
 これから涼しくなって新米が出回り始めたら、愛用の南部鉄器のごはん釜でたくさんごはんを炊いて、毎日おなかいっぱい食べるようになるでしょう。


 さて今月、お弁当に関する調査をしました。詳しい結果は別途お知らせしますが、その調査の中で「お弁当に入っているとうれしいもの」を訊きました。対象は「自分では作らないが、家族などが作ったお弁当を、週1回以上食べている人
(n=761)」です。


お弁当に入っているとうれしいもの

 3位に上がった項目を見て、私は少しびっくりしました。約50項目の選択肢の中で、上位に鶏の唐揚と玉子焼きがくることは予想していましたが、3位は「白いごはん」だったのです。大きな差ではありませんが、焼肉・しょうが焼きよりもハンバーグ・ミートボールよりも「白いごはん」が上位にあがったのです。
 私は、何だかうれしくなりました。安堵に似た感覚も覚えました。ごはんは、あってあたりまえの脇役的な位置づけになってしまっているのではないか、と心配していたからです。朝食はパンが増えても、家計消費で米がパンに抜かれても、まだまだ日本人は「ごはん」であることがうかがえました。
 そういえば、知人が、持ってきたお弁当を開けたとき「あ・・・ごはんじゃない・・・」と少しがっかりした表情を見せたことがあったことを思い出しました。そのお弁当は、野菜たっぷりの焼きそばをメインに複数のおかずとフルーツまでついた、見ためもおいしそうで栄養のバランスも考えられたステキなものでした。知人が、作ってくれてありがたい、おいしい、うれしい、と常々口にしているのがよくわかります。でも、「ごはんじゃない・・・」なんですね。


 また、都市生活研究所が1990年から3年ごとに実施している生活定点観測という調査の中に、「炊いてあるごはんを買うことに抵抗がない」という質問があります。ここで、「あてはまらない+あまりあてはまらない」と回答した人、すなわち、炊いてあるごはんを買うことに抵抗を感じている人の割合は6割強で、この10年間ほぼ変わっていません。


炊いてあるごはんを買うことに抵抗がない
 お店では、多種多様なおにぎりや持ち帰り弁当が売られています。それらを買うことに抵抗がある人は、今やほとんどいないでしょう。でも、「白いごはん」は違うのです。

 米ばなれ、ごはんばなれが進んでいるという話がありますが、私は、違うと考えています。
 日本人は、いろいろなものを、いろいろな食べ方で、食生活の中に取り入れることがとても上手です。そのため、食の多様化はどんどん進んでいます。とはいえ、人の口の数、食事の回数には限りがあるものなので、その結果として相対的な割合が減ってしまっているということなのでしょう。


 日本人の心は、私たちが自覚しているよりももっと深く、ごはんと結びついていることを垣間見た、2012年8月でした。


菅原 ひろみ

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