都市研コラム

環境貢献への富裕層の本音と建前

 都市生活研究所が3年ごとに実施している生活定点観測調査から、過去20年間のトレンドをみると、生活者の環境行動や意識が高まっていることがわかる。
 その特徴をみると、「こまめに電気を消す」「冷暖房の温度に気を配る」のように、省エネだけでなく、節約につながる行動が増えている。その一方で、「冬の洗髪回数」が増えていることを考えると、快適性を損なってまで、省エネをしたいと思っていないことがわかる。
 では、可処分所得が一般に多いといわれている富裕層(世帯年収2000万円以上)ではどうか。富裕層ではそれ以外の層に比べて、環境によい機器を買いたいという気持ちが強い。その原因には、エネルギーを使いすぎている意識が強いことがひとつの要因としてあげられる。(図1)

(図1)いまの自分の生活はエネルギーを使いすぎていると思う

 こうした傾向をみると、富裕層には「この機器を買えば、普段の生活を変えなくても環境貢献できる」といったPRが有効に思える。しかし、富裕層にインタビュー調査をすると必ずしもそうとはいえない。富裕層からは「生活を変えなくてもといわれると、環境問題に消極的にみえるので、買いたくなくなる」という意見が多くきかれた。これには、当コラムで紹介した富裕層の特徴である「知的関心の高さ」が影響している。現在の地球環境問題を考えると、「生活を変えないで環境貢献」よりも、「自らがお金をかけて環境貢献」といったほうが伝わりやすいのではないか。購買意欲にもつながりやすい。
 その他、家で食事の大半を作るべきとしつつも、売っている惣菜の利用への抵抗感もないというように、生活者の意識には本音と建前が混在していることがある。生活者のニーズを喚起するためには、単純に本音を訴求ポイントにするのでは必ずしもうまくいかない。本音と建前のどちらを訴求ポイントにするかには、実際の生活者の声をこまかくきいていくことが大切である。

中塚 千恵

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