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行動を変える難しさ

 先日、日本経済新聞社より2011年上期の日経MJヒット番付が発表され、東の大関には「節電ツール」が入りました。
 夏に向けて、さらに節電が注目されており、都市生活研究所が2008年と2010年に実施した調査では、「こまめに電気を消す」という人は約8割で高止まりしていたものの、2011年5月の調査では、91.8%と約10ポイント上昇しており、節電に取り組む人が増えているようです。

現在、行なっていること

 これまで、節電をはじめとする省エネの取り組みはCO2削減等の環境配慮として求められていましたが、自分が取り組んだ効果がわかりにくいこと等の理由から、一定の効果はみられるものの、なかなか取組みが進まなかったのではないかと思われます。都市生活研究所の調査では、「自らが取組むべきだと思う環境問題」として、最も低下したのが「CO2排出量の増加」(2008年68.9%→2010年56.3%)であり、生活者にとって「CO2削減」のための環境配慮は響きにくくなっていることがわかります。

 一方で、震災後の調査では、(取組まざるを得ない状況であることが大きいと思いますが、)社会的ジレンマが大きい行動であるにも関わらず、こまめに電気を消すといった節電・省エネに取り組む人が増加しています。その理由のひとつとして、世の中の状況にあわせて、生活者の気持ちが変化したことが挙げられるのではないでしょうか。
 生活者へのヒアリングからは、「これまでは、光熱費削減のための我慢の節電だったが、今は役に立っている、参加している気持ちが強く、前向きな節電をしている」といった声が聞かれ、自分のできる範囲で協力していこうというポジティブな気持ちが感じられました。

 今後、中長期的には、CO2削減の点からも、省エネの取組みが求められていくものと思われますが、直接的なCO2削減を前面に打ち出しては、生活者の気持ちを捉えることはできないかもしれません。みんなで参加し、役に立つといった気持ちを実感できることが積極的な行動のきっかけであったように、心理的な側面からのアプローチも必要になってくるのではないでしょうか。

荻原 美由紀

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