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風呂場の洗面器の使い方

12月に入り、さすがに寒さが身にしみる季節になってまいりました。家に帰って温かいお風呂にゆっくり入りたいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ところで、ひとくちにお風呂に入るといっても、日本全国で入浴行動に違いはないのか。そんな疑問から東京圏と大阪圏の違いを比較してみようと、先月、都市生活レポート「現代人の入浴事情2012《東西比較編》」を発行しました。


東京圏:東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県
大阪圏:大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県、三重県


調査結果によれば、東京圏、大阪圏ともに「入浴が好き」など多くの共通点がある一方で、東京圏はシャワー入浴派、大阪圏は浴槽入浴派が多いといった違いも見られました。その中で、個人的に興味深かったのが、東京圏と大阪圏の「洗面器の使い方」の違いです。
大阪圏では、身体にお湯をかけるなど浴槽のお湯をくみ出す頻度が高く、そのために洗面器が利用されています。そういえば、古くから関西の銭湯では浴槽から桶でかけ湯をする習慣があるため、かの有名なケロリン湯桶にはサイズも重さも一回り小さい関西版の湯桶があるそうです。また、関西の銭湯の湯船の周囲には、かけ湯用に腰掛けるための段差があるのも特徴だと聞いたことがあります。


[東阪] 入浴中に浴槽のお湯を手桶や洗面器等でくみ出すこと


[東阪]洗面器の用途<複数回答>


[東阪]洗面器の用途<複数回答>

都市生活レポート「現代人の入浴事情2012《東阪比較編》」(2012年11月発行)より


一方で、東京圏ではそもそも洗面器を「使わない・家にない」という回答が、大阪圏に比べて1割以上高く、特に10代においては4割以上が洗面器を使っていないという結果になっています。現在、洗面器の存在を前提に浴室空間が設計されているケースが多いと思われますが、こうした結果を踏まえると、東京圏での今後の浴室デザインにも変化が見られそうです。


新たな商品やサービスを検討する際には、生活者のニーズを探るために性別や年齢、ライフステージなど、様々な角度で比較調査していきますが、こうした地域の差に着目すると、また違ったビジネスアイデアが生まれてくるかもしれません。


島村 俊哉

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